ホレンテ島の魔法使い 感想

 ヤバすぎる…………

 明らかに作りこまれた世界観と緻密な設定に対して描かれている内容が少なすぎる(ネガティブな意味ではなく、作りこまれた世界観が異常という意味)んだけど、感想を書いていきます。ネタバレ注意。あと読み終わった感動に任せて文章を書くので支離滅裂だったり誤字脱字があったりすると思います。許せ。

 1巻の時点でもかなり面白かったんですよね。この漫画の面白さを語るには①ギャグ的なセンス②地政学民俗学の作りこみ③能力バトルものとしての側面④青春群像劇としての側面⑤ミュージカル的な側面と軽く5つ挙げることができて、なのにこれらがきれいに設定上まとめ上げられているんですよ。①④は別枠感あるけど。
 ファンタジーの“魔法”という概念を分別して個々人に持たせれば能力バトルになるし、能力を生かすためには物理学などの知識が必要、さらにそれを実用レベルにするために歌にのせてマクロを組む“宵句”になるという、これだけで本質の6割くらいをきれいに説明できるのはかなりの発明だと思います。ミュージカル展開は楽しいもんね。
 ところで、ストーリー上出てきて宵句と断言されたものは温泉宿の宵句(+α)と追い風の宵句と帽子屋の宵句の三つだけなんだけど、前者二つは日本語、後者はボルゴンドラ古語だったのでたぶん歌詞そのものじゃなくて旋律のほうに意味があるんでしょうね。たぶんあの古語は設定が練られてるからちゃんと機能する言語になっているはずで、ここからはしっかり検証してないけど、帽子屋の宵句に登場する“キノ”という人名はアルファベットで書かれているので外部の人間で、遊佐神社(鳥居ワープ回)の名前の由来が”主”に対応する“ユサ”なんじゃないかなという……あんまり自信がないな。

 それはそれでいいとして、根本の魔法(断片)のメカニズムについてほぼ全く説明がなかったですね。原初の魔法使い、カトリネルエ、毛皮の男(ファーマン、先生、ピフ・パフ・ポルトリー(飼い猫)←同一人物)が当初存在し、カトリネルエと原初の魔法使いが同一人物だったのかは確信が持てません。でもカトリネルエだけ西洋風の名前であることが突っ込まれていたので、多分同一人物だったと見ていいんじゃないかなぁ……という気がします。そうなると、るぶぶホレンテ島01より神社のある紙切山が魔法使いの住んでいた西側の拠点の“白い山”……? この辺なんか公式資料集みたいなので補完してくれませんかね……

 この辺の作りこみは最終話でサラッと流して終わっちゃった(それが重要なファクターじゃないからいいけど)けど、それはそれとしてお話の内容がかなり良かったですね。最終回予想として、カトリネルエが持っていた癒しの力をあむが受け継ぐ展開もあると思っていたのですがそうはならず、結局最後まで無能力で終わった(んだと思う)感じでした。これはつまり島の外から来たあむとの交流が、島の内外の交流、魔法の有無の対比になっていて、作品全体のキャッチフレーズである“汽水域”とも引っかかっているんだと思います。真水が流れている領域が魔法の使えるホレンテ島の領域ということですね。たぶん。 ここからはさらに一歩踏み込んだ妄想ですが、水の流れと魔法が関係あるのなら毛皮の男が島東部の河川工事を請け負ったことも深い理由があるのかもしれないですね。1巻のるぶぶ04潮風通りの中で、松の防風林の伐採についてちょっと書いてるけどあれも先生の思い入れのある場所だったんじゃないかなと予想できます。2巻にるぶぶなくなっちゃってちょっと寂しいです。

 まだまだ考察の底は尽きないですね。断片は“心を奪われる”ほどの感情によって移動することが明言されているのに、お話に登場する全員がどこから断片をもらってきたのか不明です。島にもとから宿っていて普通に拾える可能性もありますが、基本恋人や親から受け取るものなんじゃないか? と予想されます。しかし(おそらく)普通の家庭である詠やユシャはともかく、(たぶん)孤児のこっこや外部から来たかるてはその線がないので本当にわからないですね。家庭環境が謎な人が多すぎる。詠の双子の妹って何???

 今2巻114ページ5コマ目を見るとちっちゃく色々書いてますね。「香取木乃」「香取信仰と遊佐神宮の確執」あたりは考察のキーワードなんじゃないでしょうか。「香取」はカトリネルエのことなのでキノという人物と同一、もしくは同じ籍に入っていたんでしょうね。遊佐神宮は現実には存在しない言葉ですが、「神宮」を名乗れるのは天皇家を祀った神社のみなので、これは島外(少なくとも魔法と関係のない組織)なんじゃないかと予想できます。神宮の知識はややマニアックですが、この漫画はかなり民俗学に精通しているので考えすぎということはないんじゃないかなと思います。遊佐神社も魔法使いの住み家も島の同じ側にあったはずなので、確執は避けられなかったんだろうなと思います。じゃあさっきのユサ=主の考察は外れだな。

 もう無限に感想書けちゃうんだけどこの辺にしておきましょうか。深夜のテンションで勢いに任せて書いたので読み返すことは多分ないと思います。ここまで書かなかったけどギャグパートもミュージカルパートも素晴らしくて、1巻だとエロ本を立ち読みする回、2巻だと屋上で告白する回は異常なくらいギャグが冴えわたってて本当にめちゃくちゃ好きです。ミュージカルパートは1巻のラストで、各人のパートがこれまでの曲と同一で、ちゃんと韻を踏んでいて同じメロディで歌えるようになっていることが予想できます。これは例えばアニメ化とかしたら聴けてたんだろうと思うと残念ですね。でもまだチャンスは完全に消え去ったわけではないし……逆に漫画という媒体でここまでちゃんとミュージカルが表現できていることがすごいです。
 総じてここ数年で稀に見る異常な面白さの漫画でした。設定の作りこみとお話の構成のうまさはまちカドまぞくを彷彿とさせます。まちカドも3巻が異常に面白かったので。アニメ2期でそのエピソードやるからみんな見てくれよな。本編も読んでくれよな。

 今回はこの辺にしておきます。もう4時になるし。