あとがき(第1部)

 ひとまず、お疲れさまです。構造物損傷事例百合アンソロジー(ksya)はこれにて一区切りとさせてください。

 

 短編小説は去年から練習していたんですが、このアカウントで一般公開したのは4月の「善意の第一者」が初めてです。まぁあれはksyaじゃないんですけど。

 

 とりあえず、ここ半年で書いた5篇について振り返っていきます。

 

Efflorescence

 

 どういう現象かは上のリンクを踏んでほしいんですけど、簡単に言うとコンクリート内部の水に溶けた物質が内部を移動して表面に出てくる現象です。(コンクリートアルカリ性の水分を含んで内部の鉄筋に不動態被膜を作ることを知っておいてください。常識なので。あと引張応力に弱く圧縮応力に強いコンクリートと逆の性質をもつ内部鉄筋が支え合ってる関係性良くないですか?)

 この現象は日本語で白華現象といいます。

 このお話は例えるならアイドルとファンの関係性のような、それでいて対等な友人関係のような、その間を関係性が揺れ動くことによって起こった出来事の話です。コンクリートの壁が重要なお話なので、これが一番構造物損傷事例と関係がある話のような気がします。

 実は前日譚があります。結局形にならなかったんですけど。

 

Lamellar Tear

 

 ラメラテアは鋼材(鉄骨・鉄板など)の溶接を行った後、板厚方向の引張応力が発生することで鋼材内部に層状のひび割れが発生する現象のことです。引き裂く方向の力が空隙を生む……という感じです。

 一番最初に浮かんだのが最終形態になった二人のキャラデザなんですよね。カッコいい戦闘シーンが書けたはずなので、冒頭に持ってこれば良かったなぁって思ってます。これ前半は泥酔した勢いで書いたんですけど。短編でやる設定量じゃないよね?

 心臓の鼓動がパワーになるというのはスゴいですよ。例えば敢えて戦闘中に自傷行為を行い出血することで相方のパワーを上げたり、もしくは戦闘と一切関係がないシーンでも心拍数が上がると相方が出てくるっていうのもあります。いったいどうなってしまうんだ

 一切の手直しをせずにpixiv百合文芸2に投稿しています。

 

Macrocell

 

 マクロセル腐食というのは一般的には腐食電流による劣化、狭義では劣化箇所を異なる種類の材料で補修した時に電位差が発生し電流が流れて劣化が拡大するというやつです。百合じゃん……

 テーマとしては“自死を選んだAIを蘇らせることは倫理的にどうなのか”みたいな感じです。登場人物の名前はカソードとアノードの捩りです。でも絶対名字に佐倉とか使いたかった、Sacrificial anode(犠牲陽極)なので……五十島はisolationから取っています。マクロセル腐食の対策にはこれしかないので……

 札束取り出すシーンが好き。前半の日常シーンで何すればいいか困ったんですけど、漫画「トモダチヅクリ」を読んでいたので何とかなりました。読め

 

Pessimum

 

 コンクリートが避けるべきもっとも大きな劣化現象のひとつにアルカリシリカ反応(アルカリ骨材反応、ASR)というのがあります。この原因はざっくり言うと悪い骨材のせいなんですけど、この悪い骨材の量が一番多いときよりもちょっといい骨材と混ざってるときの方がより悪さをするよ、っていうのをペシマム現象と言います。百合だ……

 この話は特に実験的で、百合を乱暴に別の言葉に言い換えると「女と女の関係性」とかって言えるんですが、じゃあ女と女の間に関係性が無ければ……? ということです。まあ本編に語られない外側にあるんですけど。これと同じような取り組みをしようとしている(ように感じられる)漫画に「今日、小柴葵に会えたら。」があります。(たぶん)

 サークラ哲学的ゾンビについてたくさん調べました。でも前者についてはもっと実例に触れた方がよかった気もするし後者はそのままだと物語の登場人物足り得ない(哲学的ゾンビは、思考の中にしか存在しない)ので調整しました。二人が出会ってどうなるのかは誰にもわかりません。

 ペシマムでググると構造物損傷事例を人間関係に例える先駆者のページが出てくるので脱帽するしかないです。ところでペシマム現象って正確には構造物損傷事例じゃなくない?→

 

Test Piece

 

 テストピース(供試体)はその名の通りコンクリートの強度などを調べるために試しに作られる円柱形コンクリートのこと。構造物損傷事例じゃないよね? うん。

 ここで宣言しておきます。僕は響きがカッコいい専門用語ならなんでもタイトルに使うつもりでいます。野暮なツッコミはやめてね。野暮ついでに言うと「損傷」は「変状」「劣化」と別の概念だったりします。配慮がめんどくせぇ!!

 「創作」という行為に向き合った短編なんですが、というか僕の創作観を詰め込んだ作品なんですが、世にも奇妙っぽい……

 好き嫌いを全面に押し出して物を書くと若干の罪悪感が出てくるって学びました。でもまぁ最初のアイデアで書きたかった物が書けたので良かったと思います。

 

 

 という事で第1部はここまでです。お付き合いいただいた方はありがとうございました。まだ読んでない方は別に読まなくてもいいと思います。(ここだけの話、素人がネットに公開している小説よりもプロが商業ベースで書いている小説の方が面白い)

 

 実は第2部に着手しているので安心してください。大丈夫、僕はまだやれる……ぜひよろしくお願いします。

 

 

 

 

 え? 完全な球体? 何それ?