構造物損傷事例百合アンソロジー

あとがき(第1部)

ひとまず、お疲れさまです。構造物損傷事例百合アンソロジー(ksya)はこれにて一区切りとさせてください。 短編小説は去年から練習していたんですが、このアカウントで一般公開したのは4月の「善意の第一者」が初めてです。まぁあれはksyaじゃないんですけど…

Test Piece

朝、目を覚まして真っ先に見るメディアは新聞だった。それがやがてテレビへ、スマートフォンへと変化していった。 通勤のための移動中、昔はラジオを聞いていたことがあった。それがカセットテープへ、MDへ、ウォークマンへと変化していった。今はBluetooth…

Pessimum

人間関係は壊れる瞬間が一番美しい、というのが小塚沙子の持論である。 彼女がそれを自覚したのは8年前、沙子がまだ小学生だった頃だ。小学生の人間関係は単純なように見えて内情は複雑怪奇であり、クラス単位だけでなくクラス外の人間の繋がりや、登校班等…

Macrocell

初夏。よく晴れた朝の街並み。学校へ続く道を2人の女の子が歩いている。 五十島苑香(いそしまそのか)。高校生でありながら学校近くのアパートを借りて一人暮らしをしている、という『設定』である。 隣を歩いているのは相川乃亜(あいかわのあ)。苑香のアパー…

Lamellar Tear

レザの生まれた町の近くには“ダンジョン”と呼ばれる謎の建造物があった。夜な夜なダンジョンから魔物が現れ、人々や家畜を襲い、農作物を荒らして回った。町の人々は魔物の脅威に晒されていたが、ただ魔物たちにされるがままの生活を送っていたわけではなか…

Efflorescence

スプレーを壁に吹き付け、ブラシで擦り、水で洗い流す。白く変色していたレンガ調の壁はすっかり元の鮮やかさを取り戻した。大がかりな手押し車に掃除用具を戻し、次の場所へ移動する。寒空の下、白木はいつも通りの決まったルーチンで公園内を移動する。定…